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toona note

『スマホ脳』 書評

本の情報

  • スマホ脳
  • 著者: アンデシュ・ハンセン
  • 訳 : 久山葉子

著者はスウェーデンの方で、スウェーデンでヒットした書籍らしいです。
帯には世界的ベストセラーと売り文句が書いてあります。
書店の入り口付近に平積みにされていました。

なぜ読んだのか

スマートフォンにより学力が下がっているという話や、スマートフォンが近くにない方が集中できるという話を聞いたことがあります。
私の経験でも、知りたいことがすぐに調べられるので、物を覚えておくことが少なくなったように思います。

そのような話を知っている程度には興味を持っているテーマだったので、本屋の入り口で、たまたま目に入った本書を購入しました。

内容

1 章では非常に丁寧に人類の起源について説明がなされます。 これは進化論の本だったのか? と思うほどです。
ただ、内容としては目新しいものはなく、「まあ、知っているよね」程度のものです。

そのあとは、概ね、スマートフォンというより 、SNS と液晶ディスプレイの影響についての説明を 1 章の内容に結び付けつつ述べてゆくスタイルです。

読むのにかかる時間

つまらなく感じてしまい、ダラダラと読むことになったため、数日かかってしまいました。

新しい知識

特に得られたものはないよう思う。

感想

私は物理学が好きです。
物理学の最も好きな精神は、「実験」です。
どんなに理論が美しくても、現実にそぐわないならば理論が間違っています。(近似の影響のこともある。)
そして、理論は何らかの新しい仮説を立て、仮説が証明された時に正しい理論として認められます。
例えば、相対性理論が重力レンズにより認められたようにです。

本書に出てくる進化論はここが違うように思います。化石や遺伝子から過去に何が起こったのか予想はしますが、新しい仮説を立てて証明されていません。  
人間の脳の話を無理やり進化論に結び付けて、話されているように思えてなりません。
これは私の好きな自然科学ではありません。

著者の語り口も、著者の考えが語られていますが、それは事実とは限らないです。
事実と個人の考えは分けるべきです。

書籍の最後の方に、著者に対して「フェイスブックに気を散らされるのは、ヒトの起源の注意散漫さが戻っただけではないか?」という趣旨の質問した男性の話が出てきます。
これに対して、著者は見解を述べましたが、男性は回答に納得できずに食い下がったそうです。

ですが、質問者の男性の、「否定はしないけれど疑う」という態度が私の好きな自然科学です。
他者の意見を、「食い下がる」と切り捨てるのはよろしくない。
それは自然科学ではありません。

「疑ってかかる」と「否定する」の違いは大事ですし、「意見」と「発言者の人格」の切り分けも大事です。

総じて私の好きな話ではありませんでした。

ふと思ったのですが、だから経済学もあまり好きではないのかもしません。
株価だろうと、国勢だろうと、後付けの理由はたくさん聞きますが、これが真打ですという未来予想は聞いたことがありません。
物理学で言うところの仮説と 証明 が、経済学には抜けているようです。

翻訳者さんは素晴らしい仕事をしていると思います。
本書は、訳の面では全く苦痛なく読むことができました。